人間を超える「ポストヒューマン」のライン

AI等のテクノロジーは人間の役割を奪うのでしょうか?それとも人間を拡張するのでしょうか?テクノロジーや自然と人間との関係を問い直し、「ポストヒューマン」について想像する作品を紹介します。

Alter

『Alter』制作チーム(代表:石黒 浩/池上 高志)|“Alter” Production Team (ISHIGURO Hiroshi / IKEGAMI Takashi, Representatives)

ロボットの持つ「生命らしさ」を外見だけでなく、運動の複雑さで実装した。『Alter』は42本の空気圧アクチュエータで構成された体と、年齢・性別が不明な「誰でもない」顔を持つ。その運動は、CPG(Central Pattern Generator:脊髄に存在し、歩行などの周期的な運動を生成する仕組み)をモデルにした周期的な信号生成器、ニューラルネットワーク(人間の脳の神経回路のしくみを模したモデル)、そして『Alter』の周囲に設置したセンサーによって制御される。『Alter』のCPGとニューラルネットワークにより生成された動作は、自らの周囲を認識する照度センサーや距離センサーの値にも反応し、なめらかでカオティックな身ぶりを見せる。「メカニズムも存在目的も生物とは異なる機械が、ときに生物よりも生命性を感じさせるのはなぜか?」という問題を提起する作品。
サイズ:高さ150cm
重さ:80kg

[メディアパフォーマンス]
第20回アート部門優秀賞受賞作品

© 2016 Alter developed by Ishiguro Lab in Osaka Univ. and Ikegami Lab. In Univ. Tokyo

PaintsChainer

米辻 泰山|YONETSUJI Taizan

アップロードした線画をAIが自動着色してくれるウェブアプリケーション。着色のテイストは淡く柔らかい階調の「たんぽぽ」、ムラのないグラデーションで着色する「さつき」、強めの階調にハイライトと陰影が出る「かんな」という擬人化された3種のAIから選ぶことができる。自動着色の後には任意の範囲に彩色の指示をすることで、より自分の意図に沿った色調へ変えることも可能。また、鉛筆画などのラフな絵を線画にしてくれる機能も用意されているので、例えばノートに描いた絵を撮影し、その写真を線画にして着色するといった作業も実現できる。プロ、アマチュアを問わずイラストやマンガの制作手法に大きな変化を与えるサービスであり、公開後は世界中からアクセスが集まり数日で100万アクセスを達成した。開発者の米辻泰山はニューラルネットワークを使用して画像生成を行うアルゴリズムDCGANを応用して本サービスを制作。プログラムをオープンソースで公開しており、機械学習分野の最先端の事例として研究対象にもなっている。

[Web]
第21回エンターテインメント部門優秀賞受賞作品

© 2017- Preferred Networks, inc.

デジタルシャーマン・プロジェクト

市原 えつこ|ICHIHARA Etsuko

科学技術が発展した現代向けに、新しい弔いのかたちを提案する作品。家庭用ロボットに故人の顔を3Dプリントした仮面をつけ、故人の人格、口癖、しぐさが憑依したかのように身体的特徴を再現するモーションプログラムを開発した。このプログラムは死後49日間だけロボットに出現し、擬似的に生前のようにやりとりできるが、49日めにはロボットが遺族にさよならを告げてプログラムは消滅する。このように、イタコのごとく故人が「憑依」したロボットと遺族が死後49日間を過ごせるように設計されている。作者は祖母の死を経験し、葬儀という弔いの儀式がもたらす残された人々への機能を実感して制作に至ったという。葬送の営みを通して日本人特有の生命や死の捉え方を探求するリサーチプロジェクトとして、実験を行なっている。日本の民間信仰とテクノロジーを融合させることをテーマにした作品群「デジタル・シャーマニズム」のひとつ。
素材:スマートロボット、3Dプリント素材(フルカラー樹脂プリント)、テグス、MacBook
ロボットアプリケーション開発:Choregraph

[ロボットアプリケーション]
第20回エンターテインメント部門優秀賞受賞作品

© Etsuko Ichihara / Photo: Masashi Kuroha

AIの遺電子

山田 胡瓜|YAMADA Kyuri

国民の1割がAIを持つヒューマノイドとなった近未来を舞台に、ロボットやヒューマノイドの問題を「治療」する専門医を描くSFオムニバス。主人公の医師・須堂光は、「モッガディート」という裏の名前を持ち、時には秘密裏に違法な施術も請け負う。例えば、本来違法であるヒューマノイドのデータのバックアップを取る際、妻をコンピュータウイルスに感染させてしまった男に対し、須堂はバックアップデータによって記憶を書き換える施術を提案する。バックアップデータによって換えられた存在は、果たしてそれまでと同じと言えるだろうか。人間と非人間の差異のなかに生まれる揺らぎという、古くから多くのSFで扱われてきたテーマを、医師の視点から描く。急速にAIに注目が集まる現代において、人間や社会の在り方についての考察を促す作品。作者はIT分野の元記者であり、本作にもその知識が生かされている。

[単行本・雑誌]
第21回マンガ部門優秀賞受賞作品

© Yamada Kyuuri (Akitashoten) 2015

BLAME!

弐瓶 勉|NIHEI Tsutomu

[マンガ]
第21回アニメーション部門審査委員会推薦作品『BLAME!』関連作品

シドニアの騎士

弐瓶 勉|NIHEI Tsutomu

宇宙を舞台に異生物と戦う、正統派ロボットSFコミック。対話不能の異生物「奇居子(ガウナ)」に太陽系を破壊された人類。その一部は、播種船「シドニア」で繁殖しながら宇宙を旅する道を選んだ。シドニア最下層で育った少年「谷風長道」は、巨大装甲ロボット「継衛」の操縦士となり、戦いに身を投じていく。

第17回マンガ部門審査委員会推薦作品

©Kodansha Ltd.