進化する恋人たちの社会における高速伝記

進化する恋人たちの社会における高速伝記

畒見 達夫/ダニエル・ビシグ|UNEMI Tatsuo / Daniel BISIG

人間社会を模した進化生態系シミュレータが自動的に作り出す、高速で展開する人生ドラマを鑑賞する作品。シミュレータ内の仮想空間に存在する数千もの個体は、男性が角ばった形状、女性が丸い形状、子どもは男女それぞれの形状で小さく、そして「もの」が三角形で表現される。シミュレーション内の時間の進行は10日間を1ステップとし、人の一生は約1分半で計算され、誕生、恋愛、離別、死を繰り返す。各個体は、性別に関わらず好みの姿の遺伝子を持つ相手に求愛するが、異性カップルからしか子どもが生まれないため、異性から恋愛対象とされるような見た目に進化する。同性に恋をする個体も存在し、時には「もの」に恋をする個体も現れる。作品には個体が動き回る様子と、数個のサンプル個体の人生の出来事を記述した文章が表示される。同時に、発話合成を使ってそれらを読み上げ、産声、男女の音声による求愛の言葉、そして葬送の鐘の音が重なった効果音とともにスピーカから出力される。無機質でロジカルなシミュレーションによって、私たちが営む人生のサイクルを客観的に見ることができる。

[メディアインスタレーション|日本 / スイス]
第21回アート部門優秀賞受賞作品

© 2017 Tatsuo Unemi and Daniel Bisig