水準原点

水準原点

折笠 良|ORIKASA Ryo

戦後を代表する詩人であり、シベリア抑留の経験をもつ石原吉郎(1915–77)の詩「水準原点」を約1年にわたって粘土に刻印し、ストップモーション・アニメーションの技法で制作した映像作品。次々と沸き起こる白い粘土の波は徐々に大きくうねりだし、やがて「詩」が1文字ずつ現れる。文字は波紋をつくって現れては波に飲み込まれていくため、鑑賞者は1文字1文字を噛みしめるように鑑賞しなければならない。さざ波のシンプルな反復が内包するドラマチックさを、クレイアニメーションの表現が引き出している。作家は、オスカー・ワイルド『幸福の王子』、萩原朔太郎『地面の底の病気の顔』などの文学作品をモチーフに、書くこと/描くことを運動=アニメーションとして提示する映像を制作してきた。斬新な水の表現と言葉の発生を捉える視点が高い評価を受けた。

[映像]
第21回アート部門優秀賞受賞作品

© Ryo ORIKASA