
HIMATSUBUSHI
植木 秀治|UEKI Hideharu
列車に乗車している際に誰もが想像してしまうような情景をコミカルに映像化した作品。車窓から見える光景に合わせて、ブルーバックで合成された白い人影のキャラクターが家屋や電柱の上を飛び跳ねていく。実際に撮影した東京から静岡までの新幹線で1時間ほどの道のりと、映像内を飛び回る人影とを巧みに組み合わせて制作された。
(62分35秒)
[映像作品]
第15回アート部門新人賞受賞作品
© UEKI Hideharu

10番目の感傷(点・線・面)
クワクボ リョウタ|KUWAKUBO Ryota
光源が備えられた鉄道模型が、床に並べられた日用品の間をゆっくりと移動しながらその影を映しだす。部屋の壁や床、天井に映し出されたモノの影は、電車から見ている風景のように移り変わりながら観者を包み込む。没入・鳥瞰、既視感・未視感といった、相反する体験を交互に繰り返す映像。鑑賞者は知覚を研ぎ澄まし、その体験を語り合うだろう。
[インタラクティブアート]
第14回アート部門優秀賞受賞作品
© 2010 Ryota Kuwakubo / photo: KIOKU Keizophoto courtesy: NTT InterCommunication Center [ICC]

ねぇ、ママ
池辺 葵|IKEBE Aoi
祖母の残した洋裁店でその人だけの洋服を作り続ける『繕い裁つ人』 (2009-15)、26歳の独身女性が運命の物件を探す『プリンセスメゾン』(14-)など、これまでさまざまな女性の生き方を描いてきた作者の短編集。本作には巣立ってゆく息子を持つ母親の思いが空回りする「きらきらと雨」、修道院に暮らす2人の少女の物語「ザザetヤニク」、骨董屋の店主をしている独り身のおばあさんと少女の交流を描いた「夕焼けカーニバル」など、「母」をモチーフにした7つの物語が収録されている。本書には実際の家族としての母だけでなく、修道女、家政婦、旅先で出会った老姉妹、近所のおばあさん、ママになることに憧れる少女など、誰かの「母」的な存在となる人物が登場する。彼女たちはみな理想の母親像ではなく、愚直で、凡庸で、時に狡猾であるが、それでも優しく温かな愛を持った存在として描かれる。それぞれのストーリーは緩やかに繋がり、「母」の愛も人と人の繋がりのなかで周囲の人々に伝播してゆく。時折大きなコマで描かれる広々とした風景は、登場人物たちを包み込み、少ないセリフと大きな余白、柔らかな明暗のついた絵によって、読者には深い余韻を残す。
[単行本・雑誌 ]
第21回マンガ部門大賞受賞作品
© Aoi Ikebe (AKITASHOTEN) 2017

ハルモニア feat. Makoto
大谷 たらふ|OTANI Tarafu
ダンスミュージックやゲーム音楽の影響を受けながら、音楽活動を続けてきたyuichi NAGAOがリリースした楽曲のミュージックビデオ作品。映像を制作した大谷たらふは、波の音から始まる曲を聴いた時に感じた幻想と現実の間で揺らぐような気分から、少女と布団のダンスというユニークなモチーフを発想したという。本来CGを用いて行うエフェクトも、あえて1カットずつ手で描かれたアニメーションには、色鉛筆や水彩絵具のような温もりのあるアナログのタッチが活かされている。「幻想の世界での休息」というコンセプトによって作られた映像には音の波形を思わせる曲線が次々と現れ、気泡のように生まれては消えるカラフルなイメージと、躍動感あふれる少女の滑らかな動きによって、見る者を最後まで釘づけにする。大谷たらふはテレビ、プロモーションビデオ、CMや展示用映像の制作者として着実にキャリアを重ねてきた。その確かな技術が随所に感じられる作品となっている。
[短編アニメーション]
第21回アニメーション部門優秀賞受賞作品

ARの国のアリス
赤松正行+ARARTプロジェクト|AKAMATSU Masayuki + ARART Project
多くの人に親しまれれているルイス・キャロルの寓話「不思議の国
[メディアインスタレーション]
第17回アート部門審査委員会推薦作品『もの みる うごく AR美術館』関連作品